Q101 解雇権濫用の禁止
1 解雇権濫用の禁止
解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効とされます(労働契約法16条)。
2 どのような場合正当な理由があるといえるか
(1) 解雇理由
まず、解雇の理由が正当なものである必要があります。例えば以下のような例が考えられます。様々な要素が関係しますが、「解雇=強制退場という最終手段」であるとされていることから、「最終手段をとるだけの状況であるか」がポイントです。
①社員の入院
短期間の入院で病気自体が治療可能な場合には、解雇は原則認められないでしょう。
職場への復帰に予測できない程度の長期間を要するような場合には、労務提供が不能であるとして解雇しうると考えられます。
また、多くの就業規則には解雇事由として「病気により●●日間休業したとき」と定められている場合が多いと思いますが、その場合には定められた期間より短期間で解雇することは原則認められませんし(必要条件)、他方で、●●日間休業したからといって直ちに解雇が認められるわけでもありません。その意味で、必要条件ではあっても必ずしも十分条件ではないと言えます。
②勤務態度や勤務状況の不良
ただ勤務態度や勤務状況が悪いだけでは解雇は認められず、解雇がやむを得ないと考えられる正当な理由が必要となります。
③労働能力の欠如
当該社員につき一定の労働能力を有していることを想定して採用したものの実際の労働能力は著しく欠如していたような場合、その程度によっては解雇しうると考えられます。
もっとも、このような理由で解雇するためには、使用者としては直ちに解雇するのではなく、当該不十分な点を忠告し労働能力向上のための援助をしたうえでも是正されない場合に初めて解雇を行うという配慮が必要であると考えられます。
④経歴詐称
重大な経歴詐称があった場合には解雇しうると考えられます(経歴は回復不能だからです)。
もっとも、全ての場合に解雇できるわけではありません。その経歴詐称行為が重大で、採用の基礎を欠くような場合には解雇も許されるものと考えられます。
⑤既婚社員による社内交際
このような私生活上の行為の理由では容易に解雇は認められないと考えられます。
もっとも、この行為により会社の業務、会社の信用に著しい影響を及ぼした場合には解雇が認められることもあります。
(2) 解雇に至る経緯
また、当該理由自体は解雇理由として正当なものだとしても、解雇方法が慎重さを欠いている場合には解雇権の濫用と判断されることもあります。
そこで、できるだけ解雇以外の方法によって解決しようとしたという経緯が必要であると考えられます(「雇用継続義務」)。
例えば、勤務態度の悪い社員に対して処分を行う際には最初から懲戒解雇を行うというのではなく、まずは戒告・訓戒などの解雇以外の懲戒処分、それでも改まらない場合には諭旨解雇を試み、それも困難な場合に最終手段として懲戒解雇を考えるというステップが重要です。
(3) 解雇できるか不安なとき
当該解雇に正当な理由があったか否かについては各事案における具体的事情によって結論が異なってきます。不当解雇を行った場合には会社が大きな責任を負うおそれがあることからも安易な判断は禁物です(解雇のやり直しは不可能といえます)。解雇のリスクがどの程度あるか、是非、弁護士に具体的事情を詳しく説明して、ご相談ください。





