新着情報・業務詳細・よくあるご質問

メールマガジンNo09~社長・経営陣のための契約法務の最前線-電子契約とは~

■INDEX■(企業における契約法務のデジタルシフト~電子契約の有効性を検討)

昨年よく取り上げられたワードの一つに「デジタルシフト」があります。

リーガルの分野では、その一つとして、「電子契約」がよく議論されております。

官民問わず活用が進められているようですが、デジタルシフトの流れは今後も加速していくと思われますので、特にリーガルの側面から、今回取り上げたいと思います。

1 電子契約とは?

一般に、電子契約とは、「契約のなかで、合意成立の手段として、インターネットや専用回線などの通信回線による情報交換を用い、かつ合意成立の証拠として、電子署名やタイムスタンプを付与した電子ファイルを利用するもの」をいいます。

2 契約として有効なの?

契約締結の可否という点については、契約は、民法上、原則として「当事者の合意」のみで成立します(契約方式の自由。「口約束も約束のうち」)。

例外(法律で紙面での契約締結を義務付けられている場合。極めて限定されています)に該当しない限り、電子契約サービス等を用いた場合でも、有効に契約が成立します。通常の商取引としては基本的に電子契約での代替は「可能ではある」といえます。

 

3 電子契約は証拠として認められるのか?

デメリット?に関係して、よくご質問いただくのは、「証拠力」という点です。
当事者間で争いが生じ、最終的に裁判となった場合においては、契約書や書面が大きくものを言います。

裁判上は電子契約による契約書(以下「電子契約書」)を証拠として提出する場合に、証拠力(事実認定の基礎とすること)が認められるためには、当該電子契約書について、「形式的証拠力」(文書の成立の真正=作成者の意思に基づいて当該文書が作成されたこと=偽造でないこと)を立証する必要があります。

実際には、当事者間で形式的証拠力を争われる場合は多くはないのですが、紛争実務上、全くないかと言われれば、そうでもなかったりもします(「相手方が勝手に押した」、「社内の無権限者が無断で押した」、など)。

シビア・デリケートな企業紛争などでは、争点となることもあり、いざ、その場合には形式的証拠力の立証は結構容易ではありません。

(ア)紙による契約締結と比較して

比較として、文書(書面による契約書等)については、「本人(又は代理人)の署名又は押印」(前提事実)があるときには、当該文書の形式的証拠力が推定される旨が定められ、立証の困難が緩和されております(民事訴訟法第228条)。

要は、「印鑑証明書」があれば、「相当強い推定」が働き、相手方に立証責任が転換されることとなり、強力な証拠となっています。

重要な契約などに実印での押印と印鑑証明書を求められるのは、この点(本人確認・意思確認・権限確認)も考慮してのこともいえます。


(イ)電磁的記録による契約締結(電子署名法に準拠するケース)他方で、電子契約書の場合においても、電子署名法第3条で、「本人による電子署名(・・・本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われていること」

(前提事実)がある場合には、形式的証拠力を推定する旨の規定が設けられ、電子証明書を提出できれば、上記(ア)とほぼ同程度、立証の困難が緩和されております。

ただ、現状、電子署名法に準拠するシステムの導入には、価格などの点でハードルは低くはないといわれています。

(ウ)電磁的記録による契約締結(電子署名法に準拠しないケース)

近時増えているサービスとして、「電子契約でありつつ電子署名法に準拠しないケース」が挙げられます。

電子署名法に準拠しない分、手ごろ・安価に導入ができる反面、形式的証拠力の立証については、今のところ確立されている状況にはないといえます。

結論的には、「電子契約でも証拠として認められる(認められうる)」といえますが、紙による場合に比べ、確立までは至っていない、というのが実情です。

特に(ウ)がどの程度、社会全体や各業界に浸透していくかが、デジタルシフトの速度の決め手になりそうです。

4 本号のむすび

次号では電子契約の実務的な有効性(メリット)や留意点(デメリット)、導入のポイント等についてさらに掘り下げていきたいと思います。

いかがでしたでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

これからも有益な情報をお届けして参ります。

寒さもようやくしのぎやすくなりました。皆様もどうぞ体調にご留意くださいませ。

お電話またはメールで相談のご予約をお願い致します。

  • まずはお気軽に相談ください!お電話またはメールで相談のご予約をお願い致します。
  • tel.03-3527-2908 受付時間9:00~17:30(平日)
  • メールでのお問合せはこちら