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メールマガジンNo08~社長・経営陣のための人事労務管理-働き方関連法案と固定残業代制度の設定時間数~

■INDEX■固定残業代制度についてのよくある関連論点~働き方改革関連法案の影響/設定時間数

 

昨年は本メールマガジンにて、固定残業代制度について過去数回にわたって関連する最高裁判例を中心に取り上げてまいりました。

・日本ケミカル事件最高裁(平成30年7月19日。調剤薬局・薬剤師の事案)

・国際自動車事件最高裁(平成29年2月28日。タクシー会社における歩合給事案)

実務上、よくご相談を受ける関連トピックスとして、「固定残業代の設定時間数」という議論があります。働き方改革関連法案の影響も含め、今回触れたいと思います。

 

1 議論の所在

定額残業代制度とは、「予め定められた一定金額を「時間外手当」等として支給している場合(ないしは基本給等に組み込んでいる場合)」を指すわけですが、では、どの程度の「金額」や「時間数」を設定するか、というのが、制度設計上、不可欠の検討となります。

   

2 従来の関連裁判例

 そもそも、固定残業代制度は法令上で定められた制度ではなく、「設定金額や設定時間数」について直接の法律規制はありませんでした。

近時、設定する時間数があまりに多い場合について制度を否定する裁判例が複数だされておりました。

裁判例としては、ザ・ウィンザーホテルズインターナショナル事件が著名です。

<ザ・ウィンザーホテルズインターナショナル事件/札幌高判平成24・10・19>

ホテルの料理人・パティシエに対して「職務手当」として約15万円支給されていた事案で、会社側は、「職務手当は1か月95時間分の時間外労働の対価である」と主張し、争われました。

結論として、札幌高裁の裁判では、95時間という設定について、

  

職務手当の受給合意について、これを、労基法36条の上限として周知されている月45時間(昭和57年労働省告示第69号・平成4年労働省告示第72号により示されたもの)を超えて具体的な時間外労働義務を発生させるものと解釈するのは相当でない。・・・このような長時間の時間外労働を義務付けることは、使用者の業務運営に配慮しながらも労働者の生活と仕事を調和させようとする労基法36条の規定を無意味なものとするばかりでなく、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反するおそれさえあるというべきである(通達に言及都道府県労働局長宛の平成13年12月12日付け通達-基発第1063号参照)

したがって、本件職務手当が95時間分の時間外賃金として合意されていると解釈することはできない。以上のとおりであるから、本件職務手当は、45時間分の通常残業の対価として合意され、そのようなものとして支払われたものと認めるのが相当であり、月45時間を超えてされた通常残業及び深夜残業に対しては、別途、就業規則や法令の定めに従って計算した時間外賃金が支払われなければならない」

 とされました。

要は、告示に示された45時間の範囲内で有効性を認め、それを超過する部分は無効としましたのです。

 

この判断については、結論としては、さすがに95時間は長きにすぎるため、批判が強い一方で、「行政解釈の一つであり、かつ、絶対的条件でもない告示に示された時間数を強行法規のように位置付けて結論を導いていることの是非に議論がありました。

3 働き方改革関連法案の成立

その後、昨年、働き方改革関連法案が成立し、その目玉の一つとして時間外労働の上限規制の導入」があります。

【施行:2019年(中小企業2020年)4月1日~。適用除外の業種あり】

(概要)

・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定しなければならない。

・特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定しなければならない。

これは、当該規制は従前の36協定の上限規制はあくまで行政解釈・行政指導に留まっていたものが、実労働時間数を直接規制する法令に引き上げられたものであり(罰則もあり)、固定残業代制度の有効性にも今後大きな影響を与えることは必須と思われます。

したがいまして、適用除外業種など、一部の例外を除けば、45時間以上の労働は「違法」とされる以上、月45時間以内に設定することが無難といえるでしょう。

4 むすび

日本の労働者の労働時間は、週49時間以上の労働者の割合は統計上20%を超えるとされており(欧米では概ね10%代)、長時間労働の抑制は国全体の長年のテーマと言えます。

人事労務をめぐる裁判例も、法改正や世間のトレンドにより日々変化していることから、最新の情報に触れることがとても大事ですね。

いかがでしたでしょうか

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

これからも有益な情報をお届けして参ります。

寒さが続きますが、体調ご留意くださいませ。

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