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メールマガジンNo03~社長のための人事労務管理その2(注目最高裁判決を踏まえた実務対応)

■INDEX■注目最高裁を踏まえた実務対応(人事労務分野)
前回、正社員と非正規社員の格差是正に関する最高裁が6/1に出されたことを案内致しましたところ、
・「トラブルを生みたくないので、さっそく手当の見直しに着手しているが、最高裁をふまえると、どのような手当や設計がリスクがあるか?」
・「格差是正といわれても賃金減資は限られる。むしろ正社員の手当廃止をすべきか?」といったご質問、ご相談が多く寄せられましたので、この点、深堀してみたいと思います。
目下、働き方改革関連法案も成立したところで、非常に注目が集まっています。

1 最高裁の内容(前回のおさらいも兼ねて)
(1)そもそもの法令(労働契約法20条)
会社(法人)と従業員の間には、雇用契約が存在するわけですが(書面の有無を問わず)、この雇用契約(労働契約)の基本的事項を定めているのが労働契約法です
(労契法。2008年施行の比較的新しい法律です。より有名な「労働基準法」は1947年制定で、長らく労働法制の中心を担っており、行政監督や罰則まである非常に強力な法律ですが、労契法は、
民民の基本法である民法の特別法の位置づけで、行政監督や罰則などがないのが大きな特徴です)。
その労契法が2012年改正され、20条で定められたのが「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」でした。
簡単に言えば、「無期労働者(正社員)と有期(契約社員、パート、嘱託社員等)の労働条件(賃金、手当その他)の違いは、ア双方の業務の内容・責任の程度、イこれらの内容容や配置の変更の範囲、
ウその他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」とされています。「同一労働同一賃金」原則を定めたものと言われています
(ただし、何をもって「同一労働同一賃金」なのか、定義・内容のとらえ方はまちまちで注意が必要ですが)。
その後、2016年12月20日には、厚労省より同一労働同一賃金ガイドライン(案)あくまで(案)ですが、裁判実務上も事実上影響しています)がだされ、「問題となる事例」(9ケース)、
「問題とならない事例」(22ケース)が公表されました。たとえば、「賞与を正社員には一律支給しつつ、有期社員には支給しないようなケース」も「問題となる事例」とされています。
(2)裁判例の状況
裁判例上という意味では、従来は、「格差を違法」とした裁判例は1件程度だったのですが(平成8年丸子警報器事件。)、労契法20条が新設されて以降、
今回最高裁判決が出されたハマキョウレックスの第一審(2015年)を皮切りに、裁判例が全国で出始めました。
そして、今回の6/1日付最高裁では、契約社員(長澤運輸最高裁)、定年後再雇用従業員(ハマキョウレックス)について、ハマキョウレックス事件においては、
A無事故手当、B作業手当、C給食手当、D皆勤手当、E無事故手当の差異が不合理とされ、また、長澤運輸事件においては、精勤手当や超勤手当の差異が「不合理」とされ、損害賠償の対象となりました。
(3)最高裁の内容
最高裁の評価、捉え方はいろいろあるにせよ、こと、「手当」についていえば、その判断手法は、「各手当の趣旨認定→上記アイウの観点からの差異の有無の判断→結論」という枠組みがとられております。

(例)
・無事故手当:優良ドライバー育成・顧客信頼獲得→ア職務が同一であれば、イ配置転換などで相違はなく、ウその他差異を根拠づけられる要素もない→「差異は不合理」。
・皆勤手当:休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨→ア職務が同一であれば、イ配置転換などで相違はなく、ウその他差異を根拠づけられる要素もない→「差異は不合理」)。
このような判断手法自体は確立されたと考えてよいと思います。

2 実務対応
Q どの手当があぶない?
実際の支給趣旨、基準等、賃金全体像等ふくめさまざまな要素を加味して判断されますので、一概には言えないのですが、「どれが合うとかイメージがわきにくい」といった声を多くききますので、
裁判例やガイドライン案をふまえたあくまでのイメージの一例をお示ししたいと思います。
(1)差異が否定されやすい手当:精勤・皆勤手当、無事故手当、給食手当、超勤・深夜手当、通勤手当、福利厚生等
(2)中間的な手当:家族手当、扶養手当、住宅手当
(3)比較的差異が否定されにくい手当:基本給の差異、能率給・歩合給、賞与、役職手当

業務の違いによって変わりづらいもの、そもそも業務と関係が乏しいもの(生活給的なもの)は慎重な検討が必要といえます。

皆様の会社に当てはめた場合のイメージはいかがでしょうか?
複数の事業を行っている会社や採用ルート・採用形態・待遇なども様々な場合、そもそも、「どの正社員の賃金や手当と比較するのか」といった大きな問題もありますが、
いずれにせよ、差異を設ける場合はその合理的な説明ができることが重要です。

Q むしろ正社員の手当撤廃?
また、冒頭にもお書きしました通り、格差是正という話になったとき、「格差是正といわれても賃金減資は限られる。むしろ正社員の手当廃止をすべきか?」と聞かれることがあります。
実際、日本郵政グループ(*同グループを被告とする格差是正訴訟が、全国各地で起きており、一部手当は不合理という判断が出ています)は、2018年4月、正社員にのみ支給される住居手当について、
毎年10%ずつ減らす経過措置を設け、10年後に廃止することでJP労組と合意し、年末勤務手当の廃止なども決定し、他方で、
非正規対象に1日4000円の年始勤務手当の創設なども合意したというニュースがございました。
格差是正の労使合意ですが、正社員にとっては「不利益変更」となるので、慎重な対応が必要で、まだ議論が確立されていませんが、労使合意のもとで、このような対応をとることも増えてくるのかもしれません。
賃金、手当という、労働契約の最も基本的な部分の最高裁だけに、非常に重要なテーマといえます。

いかがでしたでしょうか
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも有益な情報をお届けして参ります。
暑い日が続きますが、体調ご留意くださいませ。

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