メールマガジンNo02~社長のための人事労務管理(実務への影響が不可避な注目最高裁判決)~
いつも【弁護士法人永代共同法律事務所メールマガジン】をご覧いただき誠にありがとう
ございます。今回は「社長のための労務管理」として、注目判例を交え、ご紹介いたしま
す。
■INDEX■注目判例(人事労務分野)
国を上げて働き方改革が進められ、長時間労働対策、生産性向上、人材確保が遍く企業の
課題とされ、今国会でも働き方改革法案の成立が議論されている最中、今月1日、人事労
務分野で実務に影響を与えることが確実な最高裁判例が2件出されました。
本年3月に最高裁で弁論(原告、被告双方から意見を聞く期日)が開かれた頃からも日
経新聞はじめ各種メディアでも取り上げられていたので、お聞きになったことがある方も
少なくないかと存じます。
<争点>
内容としては、正社員と非正規社員や定年後再雇用者との間の待遇格差の適法性が問題
となった案件です。
<最高裁の判断>
「正社員との手当格差のうち一部は不合理(無事故手当、給食手当、業務手当、通勤手
当、皆勤手当を支払う一方で、有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件
の相違は不合理)」との判断が下されました(ハマキョウレックス最高最判判決)。
また、「定年後の再雇用による賃下げは、賃金項目ごとに判断する」とし、結論として
は、「手当格差のうち、一部(精勤手当、超勤手当(時間外手当))は不合理」「(長澤運輸
最高裁判決)といった判断が示されました。
<実務への影響>
手当が不合理とされた場合の実務の影響としては、その分、労働条件が変更される(手
当が加算され、給与明細が変わる)ということではなく、直接的には、「損害賠償請求」
が認められるということです。
これらの最高裁判決は、すでにいろいろな引用、取り上げ方をされ始めていますが、
手当の名称(無事故手当、給食手当、業務手当、通勤手当、皆勤手当、超勤手当、、、)
だけで単純に判断されているわけではなく、個々の企業、個々人や比較対象となる正社員
の給与・待遇まで詳細に認定、評価したうえでのものですので、●●手当は×、□□手当
はOKといったように、簡単に結論が出るものではありませんので、最高裁の結論部分だ
けの一人歩きはたいへんリスキーです。
企業の99%を占める特に中小企業においては、精緻な手当設計をしている企業様は圧
倒的に少数ではないでしょうか。
これまでは、よい意味で、社長様の「さじ加減」で手当の有無や金額設計、運用でも、
問題は生じてこなかったといえますが、今後は、これらの最高裁で示された考え方や、
2016年12月公表の厚労省の「同一労働同一賃金ガイドライン案」なども前提知識として
踏まえたうえで、雇用形態(正社員、非正規社員)、年齢層(新入社員から高齢者雇用ま
で)を通じた全社的な目線で、手当の再構築・再設計、基本給や賞与との合理性のある賃
金体系・待遇を構築していくことが求められるといえます。
今回の最高裁は、直接的には、非正規社員や定年後再雇用者がメインですが、正社員と
の比較という意味で、結局は全社単位の賃金体系の合理性が問われているといえます。
社長様、管理部門ご担当者様におかれましては、あらためて自社の賃金規程等を見直
し、再構築、最適化、また、今後の採用条件等も見直しするよいきっかけととらえてはい
かがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも有益な情報をお届けして参ります。次号もどうぞお楽しみに。